『お産を語る』――不純な動機でこの本に辿り着いてしまった人のために
ひょんな疑問から、この本に辿り着いてしまった。
それは本来の読者層から遠くかけ離れた、とても不純な動機からであった。
タイトルの通り、産科医が自らの病院でお産を担当した五組の夫婦との対談集である。ざっくり書くと、著者は自然分娩と母乳育児を推奨している。また、なるべく高齢出産のリスクを避ける為若い内に出産するべきとの持論を展開している。
妊娠・出産どころかモテる見込みの無い私は純粋に「へぇそうなんだ」と勉強になったが、この本の出版から五年以上が経過し著者の様な考え方を突き詰めるといわゆる「自然派ママ」の思考として世間の非難を浴びる可能性も充分考えられる様になってきた。自分自身は血の道の激痛を抑える為に保険適用の漢方も使いつつ西洋の鎮痛剤にもお世話になっている身なので、「自然なお産」は理想として棚に置きつつ現代医療の恩恵は捨てられないと思われる。自分の事はさておき。
医学的知識とは別に、この本のお陰で知りたかった答えは得られた。
それどころか、あんな情報やこんなエピソードまで知る事が出来てしまい読んだ直後は戸惑い布団の上でリアルにごろごろした。この本の存在さえ知らなければ、国分太一の方が普段からプライベートをガンガン公開しているとまで思えた。
この本で得た情報を別の本と時系列的に照らし合わせて比較すると、なるほど本当はそういう出来事があっての事かあ、と納得出来る部分があった。
今となっては吹っ切れて、とにかく対談した五組の夫婦及びその子供達がこの先もずっと幸せであって欲しいと願うばかりである。
情報は一度入ってしまえば、じきに受け入れられてくる。
案外大変なのが、遠目に見て受け入れがたそうな情報を入れる前の心構えなのである。
この本が私に与えてくれたのは、頁をめくる決意をするまでの胸のざわめきであった。
私と同じ動機でこの本を探したついでにこの記事へ辿り着いてしまったあなたへ。
(つまり、サキヤマニアの皆様の事です)
最後にはきっと、幸せを祈る事が出来る筈だから。
その章に辿り着いた時に、深呼吸して覚悟を決めておいてください。